研究表彰事業

2024年度の一般社団法人千葉看護学会表彰論文は、以下の2件に決定しました。
受賞者に表彰状と副賞を授与しました。

受賞者(筆頭著者)

大塚 知子 氏

大塚 知子 氏

論文タイトル

子宮頸部前がん病変と診断された女性のスティグマプロセス

受賞の理由

本研究は、これまでスティグマへの介入研究として光を当てられていなかった「がん」に関連するスティグマに焦点を当て、子宮頸部前がん病変と診断された女性の受診体験を明らかにした先行研究に重ねて行われた研究であり、スティグマの概念化に挑戦した点で新規性が高い論文である。スティグマを経験している女性への支援を導くためには、それを経験している当事者の対象理解が不可欠であり、本研究は、それに貢献する知識を産出しており価値が高いと考える。日本の文化的背景から、研究対象者から協力を得ることが容易ではないと考えられ、この研究成果は非常に貴重であると言える。本研究の成果は、日本人の子宮頸部前がん病変と診断された患者に寄り添うがん看護の基礎資料となり、実践への汎用性や今後の研究への波及効果が期待される。

受賞者のご挨拶

この度は、名誉ある賞を頂きありがとうございます。ご協力いただきました皆様に心より感謝申し上げます。子宮頸部前がん病変と診断された女性は、がん検診を受診し診断されていますので、とても健康意識の高い女性です。しかし、HPV感染が罹患原因の一つであることから、スティグマを経験することが明らかになりました。スティグマは社会的なラベルが貼られることで生じます。今後は、子宮頸部前がん病変と診断された女性への実践的かつ実現可能な支援を構築するとともに、社会全体へのアプローチ方略を検討してまいりたいと思います。本研究を通して、多くの方にご理解いただき、子宮頸がんへのスティグマが根絶されることを期待いたします。

受賞者(筆頭著者)

井口 紗織 氏

井口 紗織 氏

論文タイトル

自然災害を経験した市町村保健師の災害時保健活動経験に対する肯定的意味づけを促す外傷後成長指標の作成

受賞の理由

本研究は、先行研究をもとに自然災害を経験した市町村保健師の外傷後成長の指標案を作成し、その内容妥当性・表面妥当性を、過去10年以内の自然災害で統括的立場として保健活動を実施した保健師9名への質問紙・インタビュー調査により検証した研究である。災害を経験した市町村保健師の災害時保健活動経験に対する肯定的意味づけを促す「外傷後成長」という概念は、これまでにない着想であり新規性が高く評価された。指標にすることで実践に活用しやすくなる点で汎用性があり、支援する側の経験の肯定的意味付けという点でも自然災害を経験した市町村保健師以外への応用可能性が期待できる。これまでの保健師活動の実践に根差した指標の開発となっており、本学会の理念である実践と研究の往還に資する研究であると認められる。

受賞者のご挨拶

名誉ある賞をいただきありがとうございます。本研究では、被災しながらも活動を続ける保健師の外傷後成長に着目し、災害時の経験とその経験に対するポジティブな意味づけを指標として示しました。本指標を災害時保健活動の振り返りに活用することで、保健師の自己肯定の促進、共に活動した他者との関係性の深まり、保健師としての信念や役割認識の強化等が期待されます。今後は、本指標を活用した研修プログラムの発展・普及に努め、災害発生時に第一線で活動する保健師の災害時や平時の活動推進に貢献できればと考えます。調査にご協力いただいた被災地の保健師の皆様、ご関係の皆様に心より感謝します。

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