2025年度の一般社団法人千葉看護学会表彰論文は、以下の2件に決定しました。
受賞者に表彰状と副賞を授与しました。
受賞者(筆頭著者)
前川 一恵 氏

論文タイトル
摂食嚥下機能が低下した在宅要介護高齢者と家族の希望する経口摂取に向けた多職種による支援モデルの構築
受賞の理由
在宅要介護高齢者と家族の希望する経口摂取に向けた多職種による支援という、現代日本における重要なテーマを取り扱った研究である。本研究で構築された多職種による支援モデルは、実用性や実践現場のニーズが高く本研究の意義は大きく、目的、方法および結果における十分な一貫性が認められる。研究方法においても、多様な職種にインタビューを行い、膨大な質的データを緻密に分析し、さらに専門家会議を経てモデルを作成しており、必要な支援要素を満たすモデルとなっており、質の高い論文であると評価する。作成した支援モデル案については、今後、実用性の検討を行うことについても言及されており、実践と研究の往還への波及効果が大いに期待される。
受賞者のご挨拶
この度は、名誉ある賞を頂き光栄です。また、本研究にご協力頂きました皆様に感謝致します。在宅の多職種の語りは、療養者様とご家族の「食べたい」希望に真剣に向き合う支援でした。この素晴らしい支援に基づきモデルを構築しました。摂食嚥下機能の低下した療養者への経口摂取の支援は、多職種の不在時に起こり得るリスクを予測し、事前に対処する必要があるため相当の知識や技術を必要とします。今後は、本支援モデルを在宅の多職種に活用しやすいツールとして普及させるために、評価を重ねて臨床の場に即した実用性のあるモデルにしていきたいと考えています。そして、療養者様とご家族の経口摂取の喜びに寄与することを目指しています。
受賞者(筆頭著者)
中條 華子 氏

論文タイトル
介護保険施設における医療依存度・要介護度の高い入所者の日常的なケア場面で発揮される生活機能―毎日の口腔ケア場面より―
受賞の理由
研究者が経験した認知症高齢者による「口腔ケアの拒否」を契機に、「高齢者の生活機能」に着眼し、それを最大限発揮できる支援につなげる研究としてICFを活用してまとめられた点で新規性が高い。また、高齢者の生活機能に着眼した先行研究との相違が簡潔に示されており、本研究の独自性が明瞭である。医療依存度、介護度の高い対象者の口腔ケア場面を、参加観察法により収集したデータをもとに詳細に分析しており、高齢者の遂行機能の発揮を助け,さらなる生活機能の拡大を促すケアにつながる汎用性の高い知見が得られている点が高く評価できる。ICFを活用し生活機能を捉えることで、研究成果を実践現場に適用しやすいと考えられ、実践と研究の往還への波及効果が期待される。
受賞者のご挨拶
名誉ある賞をいただきありがとうございます。本研究では施設入所中の医療依存度・要介護度の高い高齢者の日常的なケア場面に現れている生活機能に着目し、口腔ケア場面の観察からICFの枠組みを活用して生活機能の要素を可視化し、分類・整理して示しました。毎日のケアの中にも生活機能は豊富に現れており、看護師がICFの枠組みで対象を見つめることで、ケア拒否等の困難に感じる言動の中にも生活機能の発揮を捉えることが可能になるなど、毎日のケアがその人の残存機能を維持増進するためのケアへと発展できる可能性が期待されます。貴重な毎日のケア場面を提供していただいた施設入所者の皆様、施設ご関係者の皆様に心より感謝いたします。